旧志免鉱業所竪坑櫓は1943(昭和18)年5月10日に竣工しました。
本体は鉄筋コンクリートでできていますが、老朽化が進み、建物としての安全性が心配されていました。
志免町では、2013(平成25)年3月に策定した「重要文化財 旧志免鉱業所竪坑櫓保存活用計画」に基づき、平成28年3月までに本体の調査を行いました。
そして平成30年9月から保存修理工事を始めました。その目的は、適切な補修をして劣化の進行を抑制し、コンクリートを健全な状態に戻して竪坑櫓の寿命を延ばすことです。国・県等の関係機関との連携はもとより、町民の皆さんをはじめ多くの方の力を借り、令和3年10月に無事に完了することができました。
今後は、文化財としての価値を損なわないよう継続的に保存に取り組むとともに、志免町に炭鉱のあった記憶を次世代に
語り継いでゆきます。
工事名称: 重要文化財 旧志免鉱業所竪坑櫓保存修理工事
1.工事場所: 福岡県糟屋郡志免町大字志免
2.工事概要: 文化財建造物の保存修理工事
構造 | 鉄筋コンクリート造、地上8階地下1階建、塔屋付 |
建築面積 | 270.71平方メートル |
高さ | 47.6m |
長辺 | 15.3m |
短辺 | 12.3m |
・工事内容
(仮設工事)既存のフェンス内側を工事区域とし、竪坑櫓には足場を設ける。
(防水工事)防水層や竪樋等を新設。
(躯体工事)躯体コンクリート内部の鉄筋腐食およびコンクリート剥離・欠損部を補修する。
(建具工事)建具が失われている部分に閉塞等を行う。
(雑工事)その他木工事、補修等を行う。
・監理業者 公益財団法人文化財建造物保存技術協会
・施工業者 鉄建建設株式会社
3.工事期間 平成30年9月~令和3年10月
ここでは竪坑櫓の修理工事の過程を紹介します。
工事は1階から始め、順次上階へと足場を組み立てていきました。(平成31年2月)
浮いているコンクリートは、補修するために電動ドリルではつり取ります。
機械で鉄筋のさびをおとしているところです。
さびた鉄筋は部分的に切断して、新しい鉄筋を溶接します。
古い鉄筋は表面に生じているさびを落とし、将来のさびを抑える薬材を塗布します。
コンクリートの欠けた部分に、コテでモルタルを埋めたり、木枠を作ってグラウトを流し込んでいきました。
6階から上になると、床が設けられており、ぬけた床も補修していきました。あちこちにこうした場所があります。
屋上まで足場を設置し、作業を繰り返していきます。(令和2年3月)
足場が組まれているときは、外部をかこんだメッシュシートに掲げられているイメージシートで覆われていました。
雨・風の侵入を防ぐため、窓枠の建具の補修をしました。
屋上までの補修は完了し、窓取り付け後、足場を崩していきます。
8階内部も悪くなったところのみ補修しました。
屋上にある避雷針の支持鉄骨の補修の様子です。避雷針は新しいものに取り換えました。
竪樋も新しいものに取り換え、竪樋を支える金具は使用できるものはサビ止めを塗って再度利用しました。
2階にあったトタン屋根部分は、今回の工事で新しいものを設置しました。
補修工事前の竪坑櫓 補修工事後の竪坑櫓
鉄筋コンクリート造の高層建築物である文化財としての補修工事としては、日本では前例のない先駆的な工事となりました。今後、日本中の鉄筋コンクリート造文化財の保存修理工事の参考となっていくものです。
また、この保存修理工事は「部分修理」で竪坑櫓の寿命を延ばすこととしています。耐震補強はしていないため、大地震時には倒壊の危険が残っています。そのため、見学については今までどおりフェンスの外からの見学になります。
今後も志免町のシンボルという存在だけでなく、近代化遺産として次世代に引き継いでいくために、ご理解いただければ幸いです。
工事概要
PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)