宝満山のたぬき
これは志免町の東にある宝満山という山にまつわるお話です。
志免の近くに宝満山っちゅう(という)高い山があるが、こん(の)山にたぬきが住んどったげな。
あるひん(日)のこと、そんたぬきが山んてっぺんから下界ば(を)見下ろして言うことにゃ、「あら、今日はどうじゃろかい。田んぼが土色しとるばい。こんあいだまで黄色や紅色しとると思うとったら、いつか草色になって、今度は茶色、それが今じゃあ泥色になっとるもん」
たぬきはびっくりして山ば下りていったげな。そしたら、人間が田んぼば耕しとった。これを見たたぬきは、山に帰って、翌日また下界ば見下ろした。すると、「ありゃりゃ、田んぼに大水の出とる。ばってんおかしかね。馬やら、牛やらおるが。」
こげん言うてたぬきは目を丸くしたげな。「人間ちゅうとは、田んぼば化かしよる。」とたいそう関心したげな。
しばらくしたある日、田んぼを見下ろしたたぬきは、まぁたたまげた。「うわ~。こん前まで、大水の出とると思うとったら、どうかいね。今日はどこばみても草色しとる。こらぁおおごとばい。人間に近寄ったらろくなこたぁなかばい。」と言って、宝満山からどこかの山に逃げていったげな。
おしまい。
このページを見ている人はこんなページも見ています