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小学校英語に感じること

印刷用ページを表示する 掲載日:2023年7月11日更新 <外部リンク>

投稿内容

1999年から約20間、経営していた英語教室で会話はネイティブに任せて、小学生へ読み書き・文法・リスニングの指導をしました。2019年にセミリタイアした後、2020年6月より、福岡市内の小学校でゲストティーチャーとして、週1日~2日英語の授業をお手伝いしています。私に残された時間は多くありませんが、ライフワークとして、一つでも多くの小学校に効果的な音声教育を導入したいと願っており、その成果を福岡から全国に発信できればと夢見ております。
小学校における英語教育を洗濯してみませんか。特に今の音声教育は洗濯機に洗剤を入れてはいますが、洗濯機は適切に回転していない状態に見えます。言い換えますと、音声教育の必要性を認めて導入はしていますが、指導方法を改善しない限りその効果は限定的に終始し、児童たちの学び、習得には結びつかないと思われます。特に音声指導については9歳前後に系統的に始めるのが必要であると、多くの専門家たちが研究発表、報告をしています。以下に、ゲストティーチャーとして、現在の音声指導の指導状況についての思いを述べてみます。最後までお読みいただき、系統的な音声指導への改善への賛同をいただければ幸です。さらに、具体的な導入へのきっかけになることを心より願っております。

小学校英語教育で感じること
副題: より系統的な音声指導を取り入れよう!
 日本人はなぜ英語が苦手なのかについては、長年にわたり議論されてきましたが、未だに具体的な解答には至っておりません。多くの日本人が8年以上もの間、中学校、高校、大学で英語と取り組んできたにも拘わらず、聞けない、話せないという状況にあります。では、なぜ話すことが苦手なのでしょうか?それは、話す努力が足りないからではなくて、聞く訓練が不足しているからです。文字で書いてもらえば知っている単語でも、音として聞いた時に聞き取れない、スペルが推測できないからです。相手の言っている内容が聞き取れなければ、会話は成り立ちませんし、続きません。聞く力を持たないままコミュニケーション力(自分の思いや考えを伝える、質問する、答える)を身につけようとしても、限定的な進歩しか期待できません。日本人にとって英語を習得するには、先ず英語を聞き取れる「耳」を訓練しながら、「耳」で学ぶのが一番の近道だと考えられます。 「耳」で学ぶとは、日本人の赤ちゃんが周囲の大人たちの話す音を聞きながら、徐々に母語を理解していくプロセスを指します。このプロセスは理想ですが、我々の対象となる生徒は早くて8~9歳になります。小学校中学年や高学年を対象に、「耳」から学べる教材、カリキュラムが必要になると考えます。
 私は、福岡市内の小学校で、2020年6月からゲストティーチャーとして、中・高学年の英語教育を支援してきました。これまでの経験から、改善できる点がいくつかあると感じています。その中でも、今の音声指導の方法を改善するのが一番効果的であると確信しています。今の音声指導は、私の知る限りでは、チャンツ、CDの音を聞き取るドリル、ALTの発音を聞いてオウム返しで声を出すのが中心になっているようです。この方法では、聞き取れたり、正確に発音できるのは一部の耳の良い生徒だけであり、自分自身でその調音法に気付くことを待つのは現実的ではありません。言い換えますと、「聞き取れない」、「正確に発音できない」という状況を改善できる教材や指導方法が必要となります。この状況を改善できる音声指導、すなわちフォニックス指導については、私の提案として以下に述べますが、日本人教師でもできると確信しています。フォニックス指導は、文字が持つ音を学び、音と綴りの関係を教えることを指します。日本人教師が分かりやい平易な言葉で音の出し方を説明することで、生徒たちは発音の仕方を理解することができると考えています。特に、母国語の発音方法との対比を通じて説明することで、日本人教師はネイティブ教師よりも効果的に指導できる可能性が大いにあると考えます。
  
 私の提案は、高学年を対象にして、フォニックスの規則を徹底的に指導し、彼らに正確な発音方法(例えば、母音、子音、母音+子音など)を身につけさせることです。ネイティブが聞いて問題ないと認めるレベルの発音を目指して欲しいと考えています。また、この指導と同時に、「聞く」トレーニングを開始することが理想的です。この「聞く」トレーニングの目的は、英語の音を聞き取れるための「耳」を養成することです。一定の発音レベルが達成できれば、「聞く」トレーニングに入る準備が整います。英語は日本語と比較して音域が高く、同じ音が存在しないため、英語を聞き取るためには、最初は母音が持つ音を練習することから始めます。次に、母音と子音の2文字の組み合わせを練習します。この2文字の練習は、発音は違いますがローマ字の読み方と似ています。そして、3文字の単語を読むことに挑戦するのが良いと考えます。このように、文字と音の関係が分かり始めると、多くの生徒は3文字の単語を読めるようになります。実際に、担任先生の許可を得て、3年生が4年生に進級する直前に3文字の単語を読むことに挑戦させました。生徒たちは意欲的に挑戦し、成功した時の彼らの達成感を強く感じました。
なお、これと並行して「聞く」耳を育てる練習が必要です。3文字の単語をCDで聞いて、最初の文字、真ん中の文字、最後の文字などを聞き取る練習が効果的です。これにより、各アルファベットが持つ音を聞き取ることができるようになります。言い換えますと、音からスペルを推測できるようになるのです。つまり、音を聞くだけでスペルが分かり、知っている単語であれば意味が理解できるのです。そして、この力が単語を読む力に繋がっていきます。フォニックス指導の上で重要な点を繰り返しますが、ネイティブが聞いて問題ないと認めるレベルの発音を目指して練習することです。発音のレベルがその域に達していない場合、ネイティブの音を聞いた時に本人が認識している音と一致しないため、聞き取ることが難しくなる可能性が高くなります(文脈から推測できる場合もありますが)。
 
 それでは、私が提案する系統的なフォニックス指導法とその効果を具体的に記します。私の20年間の英語教室での指導体験や私立小学校でのフォニックスの導入(2000年から2010年)を基にしたものです。
 指導法と順序
1.  アルファベット文字26文字の名前を覚えて、正しく発音できるように練習をする。(大文字と小文字の両方)
2.  アルファベット26文字の名前を聞いて、正しく書けるように練習をする。(大文字と小文字の両方)
3.  CDを聞いて、母音(a, e, i, o, u)と各子音が持つ音を聞いて、それぞれの発音を練習する。
子音の場合は、各母音と組み合わせて練習をする、例えば、ab, eb, ib, ob, ub等。
4.  3文字単語をCDで聞いて、最初の文字を聞き取る練習をする。
5.  3文字単語をCDで聞いて、最後の文字を聞き取る練習をする。
6.   3文字単語をCDで聞いて、最初の母音、最後の母音、真ん中の母音の文字を聞き取る練習をする。
7.  母音の音、a e i o u が持つ音を練習した後、CDを聞いて指定の音が入っているか聞き取る練習をする。
8.  母音と子音の2文字ベースの音の発音を練習する。
9.  母音と子音の2文字ベースの音を聞いてどの組み合わせなのか、認識できるように練習をする。
10.次の段階は、3文字の単語を選び、その単語を音声化する練習に入る。音声化した言葉の意味が認識できない場合は、その言葉の絵カードを使って、学習者に発音と意味を関連付けるようにする。
11.フォニックスの指導上の一番の難しさは、日本語と違って全ての子音がそれぞれ音を持っていることである。したがって、子音同士の組み合わせ(ブレンド)は上級編となるので、小学生として10を目標にするのが妥当であろう。
指導効果
1.  フォニックスを学習することで、約70%の確率で単語を読める(発音する)ようになった。初めて出会う単語でも伝い読みができるようになった。
2.  カタカナ英語から離れ、より英語らしい発音ができるようになった。
3.  聞いた単語のスペルが推測できるようになり、リスニング力の向上につながった。同時に、音声からスペルを推測することで単語を書く際にも役に立った。
4.  英単語のスペルを覚えやすくなり、英単語の学習がより効率的になった。
5.  正しく発音できれば、(既知の単語の場合)意味を理解する確率が高くなります。その結果、読むことに興味を持つようになり、自力で英語を読む意欲と読解力が育まれ、将来的に中学校の英語学習にもつながると考えられます。
 なお、以下にネットなどで見られるフォニックス指導についての専門家の報告書を紹介します。総合しますと、フォニックス指導に対して積極的な報告や意見が多いようです。
1.  音声指導の開始時期は、9歳の壁と呼ばれる時期があり、9歳までにスタートするのが望ましい。遅くなればなるほど、言語野の機能は退化する可能性があります。(樋口忠彦、2017年、植村研一、2009年、長谷川修治、2013年)。
2.  脳科学の観点から、学習の順序は、リスニングから始めることが効果的です
(植村研一、2009年)。
3.  小学校の5年生や6年生は、アルファベット文字の読み書きや、文字と音の関係を学ぶのに適した年齢です、フォニックス指導は、この時期に有効です(山見由紀子、2016年)。
4.  フォニックス指導を継続的かつ体系的に実施することが重要です。正しい発音のルールを学ぶことで、未知の単語に出会った時に正しい発音を推測する能力が養われます(松土清、2021年)。
 以上のことから、このような素晴らしい効果をもたらすフォニックス学習を取り入れない理由は何もないと考えます。日本人学習者にとって、フォニックス学習は大きな武器となり得るものです。繰り返しますが、ネイティブが聞いてOKが出るレベルの発音を目指して学習して欲しいと思います。なぜなら、発音は相手に正確に伝えるだけでなく、聞き取りの際にも大きな影響を与えるからです。今年は2020年の導入から4年目にあたりますので、文部科学省や教育委員会には過去の検証を基に、必要に応じて大胆な改善を行って欲しいと切望しています。なお、フォニックス教材や指導方法の例については、約20年間にわたり私の英語教室で使用していたものです。

(令和5年6月27日投稿)

 

回答

​日頃より志免町の教育について関心をおもちいただきありがとうございます。
また、昨年度より、何度も英語教育についてのご意見を賜り誠にありがとうございます。

志免町の小学校におきましては、英語教育に関してはその充実を図ることを目的とし、業者と提携したALTの活用や研修等を重ねて授業等を進めているところです。そこでは、学習指導要領に基づいた教育課程の展開やALTと担任が連携した授業づくりなどに力を注いでいます。

外国語科の「話す」「聞く」「読む」「書く」活動のいずれも偏りなく身に付ける指導について教職員の研修を重ね、志免町の子供たちの英語力向上を目指してまいります。

貴重なご提言をありがとうございました。


(令和5年7月11日回答)