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ボタ山

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年12月26日更新 <外部リンク>

 ぼた山
ボタ山は、石炭を掘り上げた時に出た土(ボタ)を積み上げたものです。
現在、西原硬山が4つの峰を残し現存しており、自然史的にも貴重な山となっています。竪坑櫓・斜坑口とボタ山がセットで残っているのも日本で志免町だけです。
志免・須恵・粕屋の三町で所有。

四季・植生

 ボタ山は、日本で石炭産業が栄えた時代(主に大正~昭和40年)に、北海道・常磐・山口・北部九州などにできました。ボタ山は、石炭を採掘した時に出た硬石を捨てたものが、山の形になったものです。円錐状の山は、まったく利用価値のないものとされてきました。

 志免鉱業所が閉山して40年以上たちますが、普通の山のようになってきています。春は花が咲き、夏には緑をたたえ、秋には紅葉し、冬には雪化粧するすばらしい景観となっています。四季のボタ山の植生についてみてみたいと思います。

春の植生をみてみると、3月~4月になると木の芽、草花が萌えはじめて少しずつ緑色に覆われてきます。

 春の代表的な花である菜の花のほかに、星をちりばめたように花が咲くオオイヌノフグリ、果実が食べられるクサイチゴ、イノバラ、ツルニチニチソウ、スイカズラ、エニシダなどが自生しています。

また、秋にアケビのような果実をつけるムベなども緑となり、その植生の多様さには驚かされます。

 クサイチゴ(クサイチゴ)

 ボタ山をみることは日本では少なくなりました。全国的に有名なボタ山は、嘉麻市にある住友忠隈炭鉱ボタ山です。しかし、志免のボタ山は規模といい形といい、負けてはいません。

 志免のボタ山は、削られているところが第五坑硬山といいますが、須惠町側から見えるボタ山は5つの稜線を残して、人工の山だということを感じる事ができます。このボタ山は西原硬山といいますが、その高さは70mほどあります。第五坑硬山は現役の時は100mを越えていましたが、閉山後、その土を道路などの地盤改良材として持ち出したため歪な形となっているのです。

ボタ山が夏たけなわになると、草木も茂り緑はひとしお色濃くなって、数多くの花が見られるようになります。

 原野に多いマメ科の小灌木コマツナギ、月見草の仲間オオマツヨイグサ、荒地に多いノゲシなどが生えます。マダケも元気よく伸びています。

 特に帰化植物が繁茂します。その代表格がヒメジョオンです。世界中に広がっている北アメリカ産の帰化植物です。台湾原産のタカサゴユリや、南アメリカ原産のヤナギハナガサ、中国から輸入されたトウネズミモチなどがところせましと育ちます。

 変わったところでは、葉をもむととても臭いので別名ヘクソカズラというヤイトバナなども見ることができます。夏のボタ山は青々としています。

 オオマツヨイグサ(オオマツヨイグサ)

 朝夕が冷え込み、秋の気配が近づくと、ボタ山にある落葉樹の葉はそろそろ黄色や赤に色付きはじめます。ボタ山も冬支度の準備に入るのです。

 この季節のはじまりを告げるのが、セイダカアワダチソウです。セイダカアワダチソウは荒地のどこにでも繁茂するのを見かけますが、これは北アメリカ原産のキク科の帰化植物で一番に目だつものです。

 その黄色い花が終わり、色づき始めるのが、櫨の木です。真っ赤に色付く葉は印象的で、紅葉のなかでは特に目立ちます。また、パイプの形をしてススキなどに寄生する植物のナンバンキセルや、蔓性植物のクズが生い茂ります(この根からは葛粉が取れます)。

 ほかには、果実は食べられないノブドウ、果実がおいしいアキグミがあります。こちらは、ボタ山の先駆的な植物です。他の植物に先駆けて根付いたのは、これらは鳥たちが実を食べ、その糞を落とした際に種が落とされ、育ったと考えられる植物だからです。

 また、メドハギ、ヌルデ(ヌルデモミジといわれるほどよく紅葉するウルシ科の灌木)、ヒマラヤトキワサンザシ(ヒマラヤ原産のタチバナモドキの仲間)などが見ることができます。

 ボタ山は、人工的な山ですが、多くの敷地が手を加えられないまま植生が広がったことは、自然史的に重要な場所であると見直されてきています。

 ヒマラヤトキワサンザシ(ヒマラヤトキワサンザシ)

 関東以北では「ボタ山」のことを「ズリ山」と呼んでいますが、ズリ山の植生は白樺がほとんどです。その印象はこちらの冬のボタ山に似ています。

 冬のボタ山は樹木のほとんどが落葉し、草木も枯れてしまっています。ですから、冬の閑散としてきたボタ山の土の中には、珪化木という化石を見つけることができます。珪化木はメタセコイア(曙杉)という植物が化石になったもので、「生きている化石」とよばれています。300万年前、新生代第三期ころまでに生い茂り、それが地中に埋まり堆積して、石炭とともにできたものです。

 こうした中、マユミや、ナンテン、カラスウリなどが生えてきます。また、冬期に野鳥が好んで赤い果実をついばむイノバラや、イチジクの仲間で花は果実の中にあるイヌビワ、春先に果実が黒く熟し野鳥が好むヤツデもみうけられます。

 ボタ山はときには雪をかぶることもありますが、道端で花が咲くホトケノザや、園芸植物で野生化しつつあるスイセンが芽生えはじめると、ボタ山にも春が近いと知らせてくれます。この時期のボタ山は、全体につぼみを膨らまして春の訪れを待っているかのようです。

 志免鉱業所が採炭をしていたときには、ボタ山は太陽光で自然発火していたのですが、年月を経て現在のように多くの植生を見ることができるまでに変化していっているのです。四季折々のボタ山を見てきましたが、散策してみることもいいかと思います。(ボタ山の敷地内には入ることはできませんが、道路わきから観察できます)

 ナンテン(ナンテン)